神戸製鋼ピンチの記事

神戸鋼、「30億円」が映す中国ショックの深刻度 

証券部 岡田達也   2016/9/2 5:30日本経済新聞 電子版

 

 神戸製鋼所が中国ショックから抜け出せずにいる。「コベルコ」ブランドの油圧ショベルを扱う建設機械事業が想定以上に悪化し、2016年4~6月期の連結最終損益は20億円の赤字(前年同期は118億円の黒字)だった。資源安に中国のインフラ需要減が追い打ちを掛け、建機需要に復調の兆しは見えない。神戸鋼は中国で建機の生産能力を約2割削減する方針だが、影響は通期業績にも及ぶ。根深い中国ショックは会社全体の事業戦略にも影を落としそうだ。

 

「コベルコ」ブランドで展開する神戸鋼の油圧ショベル。中国では生産の合理化を急ぐ

 

 「今期は発生しないはずじゃなかったのか」。神戸鋼の4~6月期決算に多くの市場関係者が首をかしげた。焦点は建機事業で新たに計上した30億円の貸倒引当金。中国ではローンで油圧ショベルを購入する顧客も多く、景気の停滞などでローンの返済が滞るケースが目立ち始めたからだ。

 

 市場関係者が驚くのも無理はない。神戸鋼は3月末時点で、今期は顧客の「懐具合」が一段と苦しくなりかねないと判断。16年3月期決算で貸倒引当金160億円を計上済みだったからだ。会社側は4月末、「事態を重く見て保守的に繰り入れた」「17年3月期は貸倒引当金の追加計上はない」などと説明していただけに、市場では今回の30億円について「思わぬ追加計上」との受け止めが広がった。

 

 さらに円高や販売台数の減少が重なり、建機事業の部門経常損益は17年3月期通期で見ても10億円の赤字と、80億円の黒字だった期初予想から大幅な悪化が避けられない。業績全体への影響は大きく、連結経常利益も前期比31%減の200億円(期初予想は350億円)に下方修正した。

 

 市場が懸念するのは、わずか3カ月あまりの軌道修正で中国市場の回復見通しが一層難しくなったことだ。神戸鋼が前期に計上した160億円の貸倒引当金は、債権額全体の約30%に相当する。これはコマツ、米キャタピラーなど同業大手に比べるとケタ違いに高い比率だという。今回の引当金積み増しが中国の景気動向による一時的な要因なのか、神戸鋼の事業見通しに起因するのかが焦点になる。

 

 神戸鋼の梅原尚人副社長は引当金積み増しの背景について「中国経済の悪化に伴って最終顧客の支払いが滞り、販売代理店の財務内容が悪くなってきた」と語る。さらに「一部だが、債権の担保に入っている建機そのものがなくなっていたり、代理店と最終顧客が債権回収に関して訴訟に入ったりというケースも出てきた」と明かす。

 

 中国の景気動向が主因ならば、そう遠くない時期の収益回復も見通せるだろう。しかし、事態はそう簡単ではない。中国では企業の債務不履行が横行するモラルハザード(倫理の欠如)が社会問題化。実需を無視した過剰なインフラ投資のつけが不良債権として表面化している。地方の中小企業だけでなく国有企業でも支払い能力が落ち、建機業界が債務不履行問題を乗り越えて収益を立て直す道のりは険しそうだ。

 

 特に神戸鋼にとって建機は鉄鋼、電力と並ぶ3本柱の事業のひとつ。今期は鉄鋼、電力ともに収益がさえず、建機のつまずきをカバーするだけの余力がない。鉄鋼は中国発の不況にもがくうえ、国内製鉄所の生産設備を集約する構造改革のまっただ中。稼ぎ頭の電力事業も栃木県真岡市で新たな火力発電所の建設計画に着手したばかりで、当面は費用が先行する。鉄鋼の部門損益は赤字、電力も小幅減益だ。

 

 株価は約3カ月間、100円を割り込んだままの値動きが続く。新日鉄住金、JFEホールディングスが割安株の見直し買いで上昇した動きとは対照的だ。

 

 建機業界で同じく中国市場の冷え込みに直面するコマツは、収益性の高い鉱山機械の米大手買収を発表。大型M&A(合併・買収)で苦境を乗りきる戦略を打ち出した。神戸鋼は今後5年、自動車向け軽量化用素材などに約1000億円を重点投資する予定で、不振の建機事業に回ってくる余裕資金は乏しい。野村証券の松本裕司アナリストは「損益的に不安定な状況から抜け出すには、構造改革によるコスト削減徹底による損益改善が欠かせない」と指摘する。

 

 神戸鋼は21年3月期に建機事業で経常利益300億円を稼ぐ計画を掲げている。すでに中国での建機の生産能力を約2割削減するなど、てこ入れを進めている。今期の収益計画に狂いが生じた分、巻き返して目標を達成するには、聖域を設けず合理化や事業再編の取り組みをもう一段深掘りする必要がある。

 

 

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